家事労働ハラスメントで世界一短い睡眠の日本女性、フランスの2倍超える世界一長時間労働の日本男性

  • 2015/8/18
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(※2014年6月22日に書いたものです)

先のエントリー「子ども持つ女性に世界最悪の賃金差別=男性のわずか39%、OECD30カ国の女性平均賃金の半分しかない日本、「妻付き男性モデル」と「養われる妻モデル」の異常な2極化」の続編です。

男女差別を解消すると日本の経済成長は19%もアップする

下のグラフは、OECDの「ジェンダー白書」に掲載されている「男女差別の解消と経済成長の見通し(各国のGDPで、単位は10億米ドル)」に、私が「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が「男女差別に変化なしのシナリオでのGDP」の何%にあたるかを書き加えたものです(男女差別は2010年の各国水準を起点にしています)。グラフを見て分かるように、「男女差別が解消するシナリオでのGDP」が最も高くなるのが、119%の日本です。男女差別を解消すると、アメリカやフランスの109%より、経済成長が10%も日本は高くなるとOECDは見通しているのです。

政治家のセクハラやじは経済成長をも低下させる行為

そして、OECDの「ジェンダー白書」は、男女差別を解消すると日本のように経済成長が大きくなる国は、「大きな男女差別が存在するため、結果として女性労働力の有効活用による経済成長の可能性が高くなる。逆に男女差別が小さい国では、プラス効果は限定的になる」「政府と雇用主にとって今後の重要な課題は、女性が働くことにもっと魅力を感じるような労働条件と賃金の実現を進めること」「男女がもっと平等に有償・無償労働に参加する必要があり、そのために職場慣行をそれぞれの労働への需要を満たすのに適したものに変えることが必要」と指摘しています。世界的に見ても最悪レベルの女性差別が存在する日本のような国は、そもそも経済成長そのものを妨げているわけです。それなのに、さらに女性差別を日本社会で助長するような政治家による女性へのセクハラなどは、政治みずからが経済成長をも低下させる行為といえるでしょう。

それから、今年3月8日の「国際女性デー」にあわせて前日の7日、OECDが各国15~64歳の労働時間と家事労働時間を公表し、そのデータの中で、私が最も驚いたものを分かりやすくグラフにしてみたのが以下です。

 

フランスの2倍超える世界一長時間労働の日本男性

上のグラフにあるように、日本の男性の休日も含んでの1日当たりの平均労働時間は375分で、OECD26カ国の中で最長です。26カ国平均の259分より116分と2時間近くも長く日本の男性労働者は働いているのです。一番少ないフランスの173分と比べると日本の375分は2倍以上もの長時間労働となっています。フランスとの差は202分ですから、日本の男性は1日当たり3時間22分も長く働いていて、1年間にすると202分×365日=7万3,730分。時間にすると1228時間50分。ワタミ創業者の渡辺美樹自民党参院議員の言う通り「24時間死ぬまで働く」とすると1年間で51日も日本の男性はフランスの男性よりも多く働いていることになるのです。ちなみに男性・女性トータルの平均労働時間の数字でも日本は373分(26カ国平均268分)と26カ国中、最長の労働時間になっています。

世界最悪レベルの家事労働ハラスメントが横行する日本

そして上のグラフは、各国の15~64歳女性の家事労働(Unpaid work)の1日当たり平均時間が男性の何倍になっているかをOECDのデータから私がグラフにしたものです。韓国が5.04倍と最悪ですが次いで日本が4.82倍と、OECD26カ国の中で突出していることが分かります。日本の男性の1日当たりの家事労働は62分で、26カ国平均139分の半分以下、ノルウェーの男性の家事労働184分の3分の1程度しかありません。(ちなみに日本の男性の家事労働は26カ国の中で3番目に短くなっています)

当たり前の話ですが、安倍政権が狙う「残業代ゼロ法案・過労死促進法案」は、さらに労働者に長時間労働を強いるもので、過労死と家事労働ハラスメントに拍車をかけるだけです。安倍首相は口先では、「アベノミクス」は女性を活用する「ウィメノミクス」を抜きには、成功しないなどと言っていますが、まったく逆のことを実行しようとしていて、これでは経済成長にもつながらないことは先に紹介したOECDのデータでも明らかです。

先のエントリーでも紹介した竹信三恵子和光大学教授は、『家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの』(岩波新書)の中で次のように指摘しています。

職場でハラスメントを受け
低賃金と不安定な労働に追いやられていく

私たちの社会には、家事労働を見えなくし、なかったものとして排除する装置が、いたるところに張りめぐらされている。(中略)家事・育児・介護が世の中には存在しないかのように設計された極端に長い労働時間の職場。そんな働き方によって、健康を損ね、ときには死にまで追いやられた人たちがどれだけ多いかは、過労死について書かれた多くの資料をひとつでものぞいてみれば、すぐにわかる。一方で、家事や育児や介護を担うべきものとされた人たちは、職場でハラスメントを受け、低賃金と不安定な労働に追いやられていく。  現実に存在する家事労働をないものとしたり、「家事はお金では測れないほど大事な価値」であって労働ではない(だから待遇や労働条件のことなどあれこれ言わずに奉仕しろ)、というやさしい言葉を繰り出したりして、その働きを低コストに抑え込もうとする動きの下で、私たちは、自分たちの生活にとって重要なこの労働を、安心して行う権利を妨げられてきたとさえ言えるのではないだろうか。

出典:竹信三恵子著『家事労働ハラスメント――生きづらさの根にあるもの』(岩波新書)

 

家事労働ハラスメントで世界一短い睡眠の日本女性

以上が竹信三恵子和光大学教授の指摘ですが、上記グラフで紹介したようにOECDの最新データを見ても、日本は女性差別、家事労働ハラスメントが極端に激しい国だということが分かります。そして、世界最悪の長時間労働によって重要な家事労働を安心して行う権利を妨げられてきた日本の男性の分までも家事労働を担わされている日本の女性は、以下のグラフ(OECDデータから私が作成)にあるように、世界一短い睡眠時間を強いられているのです。日本の女性は家事労働を一方的に強いられた上に、子どもを持つと世界一賃金を差別されるなど、何重もの苦難が日本の女性を襲っています。このような世界最悪の賃金差別と家事労働ハラスメントによって、女性たちの貧困が最も深刻な様相を呈していると言えるでしょう。

 

それから、唐鎌直義立命館大学教授に私がインタビューしたとき、唐鎌教授がバートランド・ラッセルの『怠惰への讃歌』の一節を紹介してくれましたので、最後にそれを紹介しておきます。

「幸福と繁栄に至る道は、組織的に仕事を減らすこと」

今日は、バートランド・ラッセルの本からの抜き書きを持ってきました。ラッセルは、アインシュタインと一緒に脱原発の共同宣言を出した人です。ノーベル文学賞を受賞している哲学者なのですが、彼はこう言っています。

「人は稼いだものを消費しているのであり、消費して他人に職を与えている」と。当たり前ですね、お金を使えばそのお金が他人の所得になりますからね。

「収入を消費している限り、人々の口から奪い取るのと同量のパンを再び人々の口に投げ込んでいるのである。本当の悪人は貯蓄する人である。貯蓄した人の経済的習慣の本当の結果は、国家の武力を増すことである。カネを使った方が、たとえ酒を飲んだり、博打をしたりしても、マシであろう」と言うんです。そして「仕事そのものは立派なものだという信念が、多くの害悪をこの世にもたらしている。幸福と繁栄に至る道は、組織的に仕事を減らしていくことにある」と言っています。

勤労の道徳は奴隷の道徳

そして「勤労の道徳は奴隷の道徳である。近代の技術をもってすれば、文明を傷つけることなしに、暇を公平に分配することができそうなものである。相当な暇な時間がないと、人生の最も素晴らしいものと縁がなくなることが多い」と言うんです。これ本当ですね。

さらに「暇の効用は、今までよりもっと人に親切になり、人を苦しめることが少なくなり、他人を疑いの目で見る傾向も減り、戦争をしたがる気持ちもなくなってしまう」と。暇の効用です。「私達は機械ができる以前と同じように、根限り働いている。この点で、私達は愚かであったが、永久に愚かである道理はない」と言っています。

生産性が上がれば労働時間は減る

「生産性が2倍に上がれば、労働時間は半分に減らせる」というのがラッセルの主張です。でも私達はパソコンでオフィスのオートメーション化が進んでも、相変わらずパソコンの前にずっと居ますよね。本当は午後3時くらいに帰っていいはずなのに。私達は企業に相当な利益をもたらしているということでしょう。どんどん生産性を上げて富を多く生んでいるのに、幸せになれない。反面、1%の人がどんどん儲けて、それで変な投資をしたりして腐朽性を高めていく。

これは『怠惰への讃歌』(平凡社)という本です。1930年頃に出て、翻訳が出たのが2009年です。この人の主張はなかなか面白いです。でもこれを言うと馬鹿にされるのです。みんな働くことが立派だと思っているから。でもラッセルは働かないことが立派だと言っている。どうやったら働かなくてすむのかを考えて文明は発展してきたのに、と言っている。本当ですよね。労働苦をいかに軽減していくかを考えて機械ができたのです。でも、その機械に縛られてさらに働いている。日本に至っては、働き過ぎで過労死や過労自殺まで頻発している。「この状況は一体何なんですか?」という根源的な問いかけが今、必要になっていると思うのです。

唐鎌直義立命館大学教授談、『国公労調査時報』2014年5月号所収)

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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