時給500円で働く霞が関の国家公務員、ノンキャリをうつ病に追い込むキャリア官僚「クラッシャー」の跋扈、窓から飛び降りた方が楽と思わせる不眠不休の霞が関不夜城

  • 2016/10/20
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私が企画・編集した「霞が関で働く国家公務員座談会」の一部を紹介します。

霞が関で働く国家公務員座談会
霞が関不夜城で3千人が過労死の危機
A省Tさん(男性)
T省Nさん(女性)
N省Fさん(男性)
Y省Yさん(男性)
月刊誌『KOKKO』2016年1月号[第5号]

年間50日職場に泊まり込み、加えて50日が日付変わっての帰宅

T 職場の部署ごとに忙しさは違いますが、どの部署でも一番忙しいのは、予算対応と国会対応をしている時ですね。本省は法令、制度を作っていくところなので、上司も含め成果を出そうとすればするほど仕事は増える。加えて予算を通すためには財務省と国会議員への対応が必要ですし、地方自治体からも要望がたくさん来るのでその対応も必要になります。そのスケジュールに余裕があればあったで準備量がどんどん増えて、逆に余裕がない時は夜を徹することになる。政策的な部分では、何もない状態から一つのものを作っていくものもあり、さまざまな調査と勉強に多くの時間を取られます。

本省は全体的に人が足りない。特に若い人が少ないのです。上ばかりが多くなって下が少ないと、命令する側の人はいっぱいいるのに実際の作業部隊が薄くなる。やはり、手を動かす人を増やす必要があると思います。

いちばん残業が多かったときは、1年間で職場に泊まり込んだのが50日ぐらいあった上に、日付が変わっての深夜帰宅も50日ぐらいありました。やはり国会対応と予算編成作業の時期が忙しくなって、それぞれの資料づくりとさまざまな対応に負われて職場に泊まり込むことになる。午前2時、3時を過ぎるとタクシーで帰宅したとしても睡眠時間を確保することもできなくなってしまいますからね。

残業代は3分の1から4分の1程度しか出ない

――残業代は出るのですか?

T その時期で30~40時間ほどの残業代しか出ていませんでしたから、多くて実際の残業時間の3分の1、少なくなると4分の1程度しか残業代が出ないということになりますね。本省の残業代の扱いは各省庁はもちろん同じ省庁でも部署ごとに違いますので、部署が変わって実際の残業時間が減ったのに残業代が増えたなんていうおかしなことも起こっています。

私は上司や職場の仲間に恵まれたので今までやってこれたと思うのですが、上司や職場の仲間に恵まれず、上司からの上意下達で振り回される残業を強制されると多くの場合、うつ病などのメンタル疾患へという霞が関不夜城の最悪の悪循環の中へ放り込まれる感じがしていますね。

時給500円になり「コンビニでバイトした方がいい」と家族に言われた

N 私は回りに振り回されている典型です。月の残業は80時間ほどあり毎日辛いです。家にはただ寝に帰るだけで真夜中に夕食を食べて、すぐに寝てすぐに起きて仕事に行くという生活を繰り返しています。

海外との対応が必要な部署にいるので自分の語学能力も駆使できる部分もあるのですが、それも事務的な内容なので、自分がいなきゃと思ってやっているわけではありません。係長ぐらいになると「自分がいないと仕事がまわらない」と思えて、まだやりがいがあるのかなと思います。

私の今の仕事は、上司が決定を早くしていろいろムダで非効率な業務を見直せば、残業を随分減らせるだろうと思うことがたくさんあります。でも仕事の仕方が改善されない限り、残業せずに無理矢理早く帰っても、後から困るのは自分なので早く帰る意味もない。海外対応があって時差があるために他律的になるのは仕方ありません。海外の先方の都合で電話会議を遅くやるとかはしょうがないのですが、日本政府の閣僚や有識者、国会議員との打ち合わせが20時に始まって22時に終わることなどもあり、何が「ゆう活」なのかと思いますね。日本政府が「ゆう活」を言うのならこうした夜遅い会議を真っ先になくすべきだと思います。

残業代は部署ごとに違うので、たとえば同期の同僚は私より残業が少ないのですが、残業代は私より多かったりします。私より残業していないのに、どうしてそんなにもらっているんだろう、不公平だと思う。私の残業代を計算すると、忙しい月は時給500円になるときもあって、家族から「そのへんのコンビニでバイトした方がいいよ」と言われてしまったほどで、霞が関不夜城はブラックバイトより酷い実態だと思うのです。

係長は土日も出勤しています。私が金曜日に終電で帰って月曜日の朝9時に出勤すると、係長からの仕事のメールが100件ぐらい来ています。金曜日に終電で帰ったのに、週の頭からどうしてこんなにメールチェックをしなきゃいけないのかとイヤになります。

残業減らすための退庁目標時間が23時

毎朝その日の予定を確認しあって残業を少しでも減らそうという取り組みがあるのですが、係長は退庁の目標時間をいつも23時に設定しています。その23時の目標も守れず終電に間に合う24時半頃職場を飛び出すという毎日で、それで午前9時には毎朝出勤している。その係長は、3日とらなければならない夏休みを2日とった時でさえも、日曜日に普通に出勤していましたね。

そういう上司と、私生活も充実させたいという私のような人が一緒に働いているので、それが精神的につらい。実際、今の部署に来てから、睡眠不足のせいで偏頭痛の発作やじんましんが出て体調を崩すようになりました。

F 定員が毎年減らされていて非常勤職員が増えていますが、正規職員は毎日終電に間に合えばいい方というのが実態です。国会対応がある時期などは、昼間よりも真夜中の方が職場がにぎやかだったりして異常な雰囲気になっていますね。

Y とりわけ若い人の残業が多いですよね。きょうの座談会参加者も若い方ばかりで長時間残業に苦しめられている。職場を見ると毎年の定員削減で若い職員が少なくなっているので実働のところが薄くなっているのと、かといって上の世代も忙しいから下の世代に仕事を教えている時間が物理的に取れなかったりする。結局、悪循環で残業が膨らんでいく。若い職員が今まで全くやったことがない仕事を突然ふられて、その仕事が分かる人を探すことから始まり、直属の上司は忙しくて質問すらできないので、他の部署の同期をつてに知っている人間にたどり着ければまだいい方で、多くの場合、仕事が分からないままやらざるをえなくて毎日夜遅くまで残業して土日出勤は当たり前になってしまう。そんな職場実態なので、最近辞めていく若い人が多い気がします。若い人が結婚したり、子育てのことを考えたりすると、「もうここにはいられない」と思うのは無理もなくて、東京23区や市役所、または自分の地元の県の県庁を受け直す人が増えていますね。優秀な人材が流出しています。

N 私も地方公務員に転職した方が残業が少なくていいんじゃないかと思って調べたりしていますね。

Y 同期でそういう人が出てくると自分もと考える人がいて、これは本当に悪循環だなと思います。

午前5時の霞が関で急にバカらしくなり…

N 私は今の部署に移ってからじんましんと偏頭痛の発作が出て3週間に1回は皮膚科と神経内科に通院している状況です。薬も毎日10錠くらい飲んでいますね。医師には「偏頭痛は睡眠不足が大きい」と言われていて、最低5時間は寝た方がいいと指摘されました。でも寝られない。真夜中に帰ってすぐにご飯を食べて、その後目が冴えちゃって興奮して眠れない。体調が悪いので過労死もそうですが、過労自殺の危険も感じています。他律的な業務で朝5時頃まで職場で働いていたき、どうしてこんなに働かなくちゃいけないのか急にバカらしくなって「それならパッと窓から飛び降りた方が楽なんじゃないか」と思ったこともあります。実際にそんなことをするのは悔しいので、実行に移すわけじゃありませんが、そんなふうに思ってしまうような働き方になってしまっていることも事実ですね。

メンタル疾患になる人も多いのですが、職場に余裕がないから、メンタル疾患で不調になった人に対しても思いやりを持って接することができなくなっています。そうすると、ますますメンタル疾患が悪化したり、その悪影響でまたメンタル疾患になる人が増えたりで職場全体が悪循環に陥っているように思います。

部下をうつ病に追い込むキャリア官僚「クラッシャー」

T 見ていて感じるのは、本省の残業が多い部署には、一番に体力的に大丈夫な人が選ばれているようです。キャリアとノンキャリがいますが、とりわけノンキャリの方は体力がある人間、メンタル的にも強そうな人間を選んでいるように思います。そうすることで、残業が多くても過労死や過労自殺、うつ病をある程度回避したいと人事面で考えているのでしょう。

上司のキャリアの中には、「クラッシャー」と呼ばれるような人もいて、部下を何人もうつ病にして病院送りにする人がいます。やっぱり、残業時間を短くすることも大事ですが、残業の質も含めて上司の問題も大きいと思います。上司が細かいことを気にしたり、自分の趣味で仕事をするようになると、下の人も同じようにせざる得なくなる。逆に上司が効率良く勤務時間内に指示を出し、うまく部下を導いてくれたら、ムダな作業がなくなって仕事が効率的になるので全体としても良くなる。全然関係のない趣味レベルのことを「ちょっと気になるからやってみて」と言われると、部下は物を言えない分、悩むしストレスにもなります。

長時間残業で霞が関から地方公務員や民間に人材が流出している

Y 霞が関国公が毎年取り組んでいる10年前の残業実態アンケートから比べると、残業時間が減ってきていますが、最近は非常勤職員の仲間もアンケートに答えてくれていたり、実際、いちばん激務の人は、アンケートに答える時間さえなかったりすることが大きいと思います。そういう意味ではこのアンケートは一番大変な人が答えられないという問題もありますね。

F 省庁別の残業実態を採用前に見たら厚生労働省とか入らないよね。

N 就活の時、公務員を受けるなら本省は不夜城だから、地方公務員がいいと言う人が圧倒的に多かったですね。本省の人事担当からアンケートを書かされた時、「どうして本省から地方公務員や民間に流れるのか?」と聞かれましたが、霞が関不夜城なんて揶揄される長時間残業のせいに決まってるじゃないかと思いましたね。

霞が関の職場全体が「クラッシャー」

Y 献身的な人が多いので、一定程度の自己犠牲があっても何とかしたいと思い、がんばりすぎてメンタル疾患になってしまうケースが多いようです。しかし、がんばった挙句に倒れたにも関らず、そうなった人への見方は非常に冷たい。産休・育休に対するマタハラなどもそうですが、うつ病で休むと忙しい中で「あいつ倒れやがって」となる。

N 職場が殺伐としているところがあるから、そういう人は復帰もしにくくなる。だから専門のポストが必要になってくるのだと思います。職場が一定程度余裕があって、あたたかい雰囲気があればそこへ戻れますが、それがないので、倒れた人だけが悪人扱いされる。しかもメンタル疾患は連鎖する側面もあるから、一人倒れたらまた次の人が倒れるという悪循環になってしまう。じっくり治さないと再発しますが、じっくり治す余裕もない。遠方の地方自治体から来てもらって、使いつぶした挙句にメンタル疾患にして元の職場に帰すみたいなところもあるから恐ろしいと思う。霞が関の職場状況は怖いです。先ほどキャリア官僚に「クラッシャー」がいるという話が出ていましたが、霞が関の職場自体が「クラッシャー」になっている。職場が人を使いつぶしていますね。

いちばん忙しい時で2割程度しか残業代が出ず

T 私はいちばん忙しい時で2割程度しか残業代が出ていませんでした。忙しい時は深夜3時まで目一杯仕事して休日出勤もするわけですが、多くの場合、仕事が回らないのでそうなっていて管理職もきちんと知らなかったりする。あまり残業のことを問題にすると自分に能力がないと自分で言っているように見られてしまう職場の雰囲気もあってそうしたことが問題になりづらいところもあります。

霞が関不夜城の住人は365日仕事している

N 先ほども言いましたが、残業代が少ないので酷い時は時給500円になってしまいます。残業が少ないときでも時給1,000円ぐらいです。

私の部署の職員は休日でもメールチェックをするのが日課です。夏休みを取っていても、トークンを借りてメールを常に見ています。だから出勤していない休日もみんな仕事をしてる。IT化で職場にいなくても仕事ができるから、結局、霞が関不夜城の住人は365日仕事してるような感じですね。今年のゴールデンウイークなんて毎日全員が出勤していて、さすがの係長も「みんないてびっくりした」と言っていました。とにかく誰も「休んだ方がいい」とは言わないので、酷い状況です。

「霞が関不夜城で365日ワークばかり」で女性活躍?

「女性が活躍できる社会」とか「女性が輝く社会」などと言って、国家公務員の管理職の女性比率を引き上げるようなことを安倍政権は考えているようですが、実際に霞が関の働き方を見ていると、女性はどう考えても働きづらいです。

そもそも不夜城の長時間残業に耐えうるかどうかが基本的な評価軸のようになっているわけですから、母性保護の点とともに、家事や育児、介護などの家族的責任が重くのしかかっている女性はよほど条件が恵まれている人じゃないと霞が関不夜城の住人として認められない。そうすると、管理職に女性を何%というのは、そうした一部の特別な女性が表面的に抜擢されるだけで本当の意味でも女性の社会進出とは逆行するものになるような気もしています。

「ワーク・ライフ・バランスが大事だよ」って職場でも言われていますが、私の部署では、「霞が関不夜城で365日ワークばかり」の職員しかいませんから、どこにライフがあるのかという話で、女性も男性も子育てや介護などできるわけがないのが現状ですね。

 

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「国」と「公」を現場から問い直す情報誌
『KOKKO』第5号(2016年1月号)
[特集] 国家公務員の働き方改革を問う

国家公務員の働き方改革を問う ……………… 005
鎌田 一 国公労連書記長
〈霞が関で働く国家公務員座談会〉
霞が関不夜城で3千人が過労死の危機 ……………… 014
「ゆう活」実態アンケートの結果について ……………… 033
国公労連 調査政策部 個人番号制度と国家公務員 ……………… 042
鎌田 一 国公労連書記長
[連載] 国公職場ルポ 第5回
[国土交通省東北地方整備局]―人と予算足らず「官から民へ」のPPPで震災復興 旭化成建材の杭打ちデータ偽装と同様の危険性も ……………… 051
藤田和恵 ジャーナリスト
[連載] ナベテル弁護士のコラムロード 第5走 固定残業代の最前線
―ワタミの大卒初任給が日本銀行より高いのはなぜか ……………… 061
渡辺輝人 弁護士
[連載] スクリーンに息づく愛しき人びと 第5作 シンデレラ物語へのある現代的な回答『フランス、幸せのメソッド』ほか ……………… 066
西口 想 国公労連書記
[リレー連載] 運動のヌーヴェルヴァーグ 藤田孝典⑨
『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』を発刊して―高齢者の貧困と若者の貧困の「見える化」と言葉の持つ力― ……………… 071
藤田孝典 NPO法人ほっとプラス代表理事
[書評 第01回] 多和田葉子編『ポケットマスターピース01 カフカ』 ……………… 077
吉川浩満 文筆家

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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