「努力すれば報われる」はウソ(20年続く賃下げ)、アベノミクスで成長するのは外国人投資家などの株主(配当は4.2倍に激増)、公正な経済の実現に最低賃金1500円がいますぐ必要|水野和夫さん@エキタス新宿街宣

  • 2016/3/23
  • 「努力すれば報われる」はウソ(20年続く賃下げ)、アベノミクスで成長するのは外国人投資家などの株主(配当は4.2倍に激増)、公正な経済の実現に最低賃金1500円がいますぐ必要|水野和夫さん@エキタス新宿街宣 はコメントを受け付けていません

本来なら自分でレポートすべきところですが、連合通信が報じてくれましたので、それを紹介させてもらいながら、少し裏付けのグラフや表も貼っておきます。

▼「連合通信・隔日版」(2016年3月24日付 No.9060)より転載(※写真は私が撮ったものです)

◆最賃1500円で格差なくせ/エキタスが新宿で街宣

路上から最賃1500円を求める若者たちのグループ「AEQUITAS(エキタス)」が3月20日、東京のJR新宿駅前で街頭宣伝を行い、約700人の市民が参加した。軽快な音楽をバックにエキタスのメンバーや識者らが次々にスピーチし、人々の注目を集めた。

中心メンバーの原田仁希さんは「低賃金で劣悪な働き方が職種、雇用形態にかかわらずどんどん波及している」と、若者を取り巻く雇用環境の悪化について語った。「今の若者はなんとか生き残るために働いている。でもこんなのはおかしい。本当は人間らしく誇りをもって働きたい。最賃1500円はそのためのささやかな要求です」と訴えた。

自立生活サポートセンターもやい理事長の大西連さんも「母子家庭の平均就労年収は180万円。フルタイムで働いても暮らしていけない。最賃アップに加え社会保障の拡充が急務だ」。

経済学者の水野和夫日本大学教授は「アベノミクスと日銀の政策は民主主義からかけ離れている」と批判。「最低賃金をいますぐにでも1500円に上げる180度の転換が必要だ」と語った。

民主、共産、社民の代表も駆け付けた。共産党の小池晃参議院議員は「必要なのはトリクルダウンではなくボトムアップ」と提起。集会の最後には各党代表が檀上で手を取り合い、参加者は「経済イシューで野党は共闘」「経済にデモクラシーを」とコールを繰り返した。

 

◆「努力すれば報われる」はうそ
日本大学教授 水野和夫さん

小泉政権の頃から「改革なくして成長なし」ということが叫ばれてきましたが、これは実際のところ「リストラなくして企業の利益追求なし」という意味でした。

アベノミクスは「成長戦略」と位置付けられています。それによって上場企業の最終利益は戦後最高益になりました。景気は良くなっていないのに、なぜ最高利益を更新できるのか。それはリストラ、非正規社員化によって人件費を削減しているからです。

景気は一時回復しましたが、賃金は20年下がり続け、働く人全体の実質賃金はここ3年間で4%以上も下落。景気をよくすれば何とかなるというのは全くの幻想だったことが明らかになっています。

国は「努力した者は報われる」と言っていますが、バブル崩壊後、日本で努力をしていない人などほとんどいないのではないでしょうか。全員が一生懸命努力しても、その結果が伴わないのは、「報われた人だけが努力していた、ということにしておこう」という理屈のすり替えがなされてきたからです。

アベノミクスの成長戦略は「成長」の主語が抜けています。成長しているのは一般の労働者でなく、外国人投資家などの「株主」です。

このように、安倍政権の経済政策は民主主義ともかけ離れています。公正な経済の実現には、最低賃金をすぐにでも1500円に引き上げなくてはいけません。(3月20日の「エキタス」新宿街宣で)

 

◆人間らしい働き方が必要だ
東京大学教授 本田由紀さん

今世紀に入って非正規社員の不安定雇用と、低賃金が大きな問題となっています。必要なくなればすぐ切られてしまう非正規社員の苦しい現状は明らかです。一方、正社員の雇用条件もかつてより過酷になり、長時間労働や過重労働で命を落とすケースが増えています。

不安定過ぎてつらい非正規、過酷過ぎてつらい正規という二択を迫られ、その上ブラックバイトやブラック企業など、正規と非正規の「悪い所取り」の働き方も広まっています。

要するに経済の低迷が長引くなか、企業は利益を上げられず、そのしわ寄せを全て働き手にかぶせるようなあり方がまん延してきたのです。こんなやり方を続けていては働く者はどんどん消耗し、生産も消費も活性化から遠ざかり悪循環が進むだけです、

日本の教育機関は若者を組織にうまく送り込みさえすればいいと、具体的な仕事のスキル、違法な働かせ方にノーと言う方法を伝える責任を果たしてきませんでした。空気が読めて、しごきに耐えられる人間を育てさえすれば企業に重宝されると考えてきたからです。

これからはきちんと要求を示し、仲間と共にそれを実現させていく姿勢とパワーを全ての人々が持つことが望まれます。私たちは怒り、動き、ひどい状況をやめさせ、改善し、人間らしい生き方を政府や企業から勝ち取っていくべきです。(3月20日の「エキタス」新宿街宣で)

 

――以上が連合通信からですが、データを付け加えておきます。

まず、水野和夫さんが「賃金は20年下がり続け」と言っている部分です。財務省「法人企業統計」の数字を見ると(下の表)、いつも安倍首相が自慢している資本金10億円以上の大企業だけをとっても、従業員給与総額は42兆5430億500万円(1995年度)から41兆8809億5100万円(2014年度)へと6620億円も下がっています。これを従業員給与の平均額で見ると、587.5万円(1995年度)から563.5万円(2014年度)へ24万円も賃下げになっているのです。

次に、「働く人全体の実質賃金はここ3年間で4%以上も下落。景気をよくすれば何とかなるというのは全くの幻想だったことが明らかになっています」と水野さんが言っているところです。下のグラフにあるように、働く人全体の実質賃金は3年前の2012年は99.2だったのが安倍政権の3年間で2015年の94.6へと4.6ポイントも賃下げになっています。

そして、下のグラフは、1997年度を「100」にして、財務省「法人企業統計」から資本金10億円以上の大企業に限って、労働者の賃金(従業員給与総額)と経常利益、配当金、内部留保を見たものです。水野和夫さんが指摘した通り、大企業の経常利益と内部留保は2倍以上に増加して、大企業の景気は史上最高に良くなっているのに、労働者の賃金は95.4%とマイナス4.6ポイントの賃下げになっているのです。「景気をよくすれば何とかなるというのは全くの幻想」だということが明確に分かるグラフです。その上に、配当金は4倍近くも激増しているわけですから(※1995年度からの20年間で比較すると421%になるので4倍超も配当金は増加しています)、水野さんが「成長しているのは一般の労働者でなく、外国人投資家などの「株主」です。このように、安倍政権の経済政策は民主主義ともかけ離れています。公正な経済の実現には、最低賃金をすぐにでも1500円に引き上げなくてはいけません」と指摘し、「アベノミクスは絶対いらない!」とコールするのも当然のことなのです。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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