無認可保育園の子どもの死亡事故発生率は認可保育園の30~45倍、公的保育の民営化・規制緩和が子どもの命を奪い続けている

  • 2016/3/14
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保育の問題で、クリッピングしておきたい報道がいくつかあるのでまず紹介します。

社説 保育施設の拡充 現実と向き合う姿勢を
北海道新聞 3月14日付

「保育園落ちた日本死ね!!!」と、わが子が保育園の入園審査に落ちた不満をつづった匿名女性のブログが波紋を広げている。

子どもを産んでも預け先がなく、仕事を辞めざるを得ない―。

女性の切実な訴えを機に、保育制度の充実を求める署名が6日間で2万8千人分も集まった。子育て世代の不満が、政府が考える以上に高まっている証左だろう。

国会で質問を受けた安倍晋三首相が「匿名である以上、本当かどうか確かめようがない」などと答弁したことも反発を招いている。

政府は「1億総活躍社会」を掲げ、重要課題に「待機児童ゼロ」を唱えている。ならば、子育ての現実と向き合うことが不可欠だ。

親たちの声に耳を傾け、保育施設の拡充に努める必要がある。

 

 

36%が認可保育所「落ちた」 都内20区で2万341人 本紙調査
東京新聞 2016年3月13日付

東京23区を対象に本紙が実施した「保育緊急アンケート」(20区が回答)で、4月に認可保育所に入れない子どもが2万人余りに上ることが分かった。申込者のうち入所できない子の割合は36%と、昨年より1ポイント悪化。区役所の敷地や学校の校舎を保育所に活用するなど、区は受け入れ枠の拡大に取り組むが、申込者の増加に追いつかない。

 

都内保育所
倍率2倍超 6区の認可園、整備追いつかず
毎日新聞 2016年3月13日付

東京都23区内で、今年4月からの認可保育所入所を希望する0~2歳児のうち、杉並区など6つの区で入所倍率が2倍を超えることが毎日新聞の調べで分かった。「保育園落ちた」と訴えるブログを機に、保育所に子どもを入れられない親たちの不満が各地で噴出しているが、背景にある厳しい入所事情が浮き彫りになったかたちだ。ほとんどの区で前年よりも受け入れ枠を増やしているが、それを上回る勢いで入所希望者が増加しており、昨年よりも状況は厳しくなっている。

こうした実態からも保育所の拡充は緊急に求められているわけですが、量的な問題だけでなく、質的な問題についても少し古い報道ですが、あわせて紹介しておきます。

 

認可保育園:01年境に事故死増える 規制緩和影響か
毎日新聞 2009年11月19日付

保育施設などで急死した子どもの遺族、弁護士らでつくる「赤ちゃんの急死を考える会」(櫛毛冨久美会長)が18日までに、保育施設での死亡事故を分析したところ、認可園での事故は「待機児童ゼロ作戦」で保育所の規制緩和が加速した01年を境に増えていたことがわかった。現在、政府は都市部認可園の基準緩和を進めようとしているが、同会は20日、厚生労働省に基準を緩和しないよう申し入れる。

遺族からの相談や報道などをもとに1961年度から2008年度までの死亡事故240件を調査、分析した。
認可園での死亡事故は00年度までの40年で計15件。内訳は61年度からの10年ごとでみると60年代2件、70年代6件、80年代1件、90年代6件だ。しかし、01年度以降の8年で22件起きた。

01年は小泉純一郎元首相が所信表明演説で「待機児童ゼロ作戦」を打ち出した。認可園について、年度途中に「定員の25%増まで」という定員の弾力化の「枠」が撤廃され、面積基準内なら子どもが入所できるようになった。9月には、「保育士定数の8割以上は常勤」との規定も、年度途中の園児増に対応する場合は、非常勤保育士でかまわなくなった。

同会のまとめでは、かつての事故は「うつぶせ寝」などによるものが多い。しかし01年度以降は、遊具置き場で首を挟まれ呼吸停止(02年・1歳4カ月)▽川でおぼれた(04年・6歳)▽本棚下の収納部で熱中症(05年・4歳)など、保育士が目を離した際の事故や「経験不足の短時間保育士が穴埋めする現場が、事故の背景と思われる」(小山義夫副会長)事例も増えた。

採用直後の保育士がリンゴなどを食べさせ窒息(02年・1歳)▽若い保育士がうつぶせ寝にして掛け布団をすっぽりかぶせ1時間放置(08年・1歳)などだ。

厚労省保育課の担当者は「保育施設での死亡事故については国への報告を義務づけておらず、自治体から任意で連絡があった分しか把握していない。データがないので、定員の弾力化など規制緩和との関連性があるかはわからない」と話す。

保育園での事故に詳しい高見澤昭治弁護士は「待機児解消は切実だが、認可園でも事故が増えている。国は調査監視もせず、さらに基準を緩和するのでは子どもの命と安全は守れない」と指摘する。

 

規制緩和後 子ども死亡増
新システムで拍車 宮本氏撤回要求
しんぶん赤旗 2012年5月29日付

日本共産党の宮本岳志議員は28日の衆院社会保障・税特別委員会で、規制緩和により子どもにとって最も安全であるはずの保育園で死亡事故が起きているとし、子ども・子育て新システムでは「事故を根絶するどころか、いっそう深刻化させる」と強調しました。

宮本氏は株式会社の参入、民間委託の促進、保育所への詰め込みなど、小泉政権以来、保育の分野に規制緩和が行われてきたと言及。子どもの死亡事故が2001年からの10年間で100件を超え(グラフ)、10、11年度は2年連続で2桁に達していることをあげ、「子どもの命が奪われ続けてきたことは動かしがたい事実」と追及しました。(中略)

宮本氏が子ども1人あたりの面積基準を超える詰め込み保育をしていた愛知県碧南(へきなん)市の民間保育園での死亡事故をあげ、待機児解消のため面積基準を自治体まかせにしては、安全も子どもの成長も阻害されると指摘しても、小宮山厚労相は「市町村が条例を策定する際に、子どもの安全は考慮される」と答えるだけ。宮本氏は「最低基準の引き上げこそ必要」と強調しました。

宮本氏は、新システムは公的責任を放棄するものと批判。「小泉政権以来、進められてきた規制緩和と保育の市場化を完成するもの」と強調しました。

  1. 上のグラフを見ると、1981~1990年の保育施設での死亡事故は19件。直近を見てみると、厚生労働省の「保育施設における事故報告集計」(2015年2月3日)で以下になります。

これを分かりやすくグラフにしてみたのが以下です。

上のグラフを見て分かるように、2013年の死亡事故19人というのは過去最悪になっていますから、安倍政権下における過去最悪の数字がまた一つ増えたことになります。

それから、1981~1990年の保育施設での死亡事後19件は、保育施設の子どもの数がそもそも少なかったせいではないかと思う人がいますので、以下の厚労省のサイトにアップされている過去の「保育所の在所児数」を紹介しておきます。下のグラフを見ると、1980年(昭和55年)より、死亡事故が増えてきた1991年(平成3年)以降の方が子どもの数が少なくなっているのです。

加えて、認可保育所と認可外保育所の死亡を子ども10万人当たりの死亡事故率で比較すると大変な数字になります。

2013年の認可保育所の子どもの数は236万5,349人で、認可外保育所は19万5,711人。認可保育所の死亡事故件数4人は、10万人あたりにすると0.169で、認可外保育所の同15人は同7.664。認可外保育所の10万人あたりの死亡事故率は認可保育所の45.3倍にのぼるのです。同じ計算で、直近の2014年(上記が厚労省のサイトにある子どもの数)を見ると、認可保育所は0.207で、認可外保育所は6.196。同30倍にのぼります。

以上、見たきたように、安倍政権下で、2013年に19人(過去最悪)、2014年に17人の幼い命が「公的保育の解体・民営化・規制緩和」によって奪われています。安倍首相は、「戦争法案」についての記者会見で、「お子さんやお孫さんたち」の「その命を守るべき責任を負っている私や日本政府」、「内閣総理大臣である私は、いかなる事態にあっても、国民の命を守る責任があるはずです。そして、人々の幸せを願ってつくられた日本国憲法が、こうした事態にあって国民の命を守る責任を放棄せよと言っているとは私にはどうしても考えられません。」と述べています。ならば、安倍首相自身の言葉どおり、幼い命を守るべく公的保育の拡充をただちにはかるべきです。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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