都道府県別の「子どもの貧困率」は子育て世代の「非正規率」とつながっている、過去最悪の非正規率へ更新し続けるアベノミクスが子どもの貧困をいっそう深刻化させる
毎日新聞の報道です。
子育て貧困世帯
20年で倍 39都道府県で10%以上
毎日新聞2016年2月18日少子化で子どもの数が減少しているにもかかわらず、生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯が過去20年で倍増したことが、山形大の戸室健作准教授の研究で分かった。戸室氏は都道府県別の「子どもの貧困率」も初めて明らかにした。39都道府県で子育て世帯の10%以上が貧困状態にあり、子どもの貧困が全国的に深刻化していることが浮き彫りになった。
戸室氏は、総務省が国民の就業実態を調べるため、5年ごとに実施する「就業構造基本調査」のデータなどを分析。生活保護費の受給対象となる最低生活費以下の収入しかなく、かつ17歳以下の子どもがいる世帯数の20年間の推移を調べた。
その結果、1992年に約70万世帯だった子育て中の貧困世帯数は、直近の2012年調査では約146万世帯に倍増していた。一方でこの間、子育て世帯自体は約1293万世帯から約1055万世帯まで約2割減っているため、「子どもの貧困率」(17歳以下の子どもがいる世帯に占める貧困世帯の割合)は5.4%から約2.6倍の13.8%に悪化した。
都道府県別では、貧困率が高い順に(1)沖縄(37.5%)(2)大阪(21.8%)(3)鹿児島(20.6%)(4)福岡(19.9%)(5)北海道(19.7%)??と続き、ワースト10のうち8府県が西日本に集中した。10%を切ったのは、最も低い福井(5.5%)など8県にすぎず、残りは10%以上だった。また、1回前の調査(07年)と比較すると、埼玉、千葉、神奈川などの首都圏や三重、静岡などの中京圏で全国平均を上回る貧困率の上昇がみられた。
「子どもの貧困率」については、政府も厚生労働省の「国民生活基礎調査」に基づいて算出。国全体の平均のみ公表し、直近の12年は16.3%だった。ただ、平均的な所得の半分未満で暮らす人はすべて相対的に貧困状態にあるとみなす政府の算出方法では、貧困率に大きな変化はなく、91年でも12.8%だった。これに対し、戸室氏は都道府県や世帯人数などによって異なる最低生活費に基づいて算出することでより貧困の実態に近づけた。
戸室氏は「貧困率の高位平準化が進んでいる。国が率先して対策を進めることが重要で、生活保護費を全額国庫負担にすべきだ」と提言している。戸室氏の論文は、近く刊行される「山形大学人文学部研究年報13号」に掲載される予定。
この都道府県別の子どもの貧困率を見て、雇用問題が関連するのではないかと思いました。そこで、総務省の「就業構造基本調査」(2012年の調査)にある都道府県別の若年者(15~34歳)の非正規率と比較してみました。下が「就業構造基本調査」の元データです。
そして、上記のデータと、戸室氏の子どもの貧困率とをグラフにしてみたものが以下になります。
一目瞭然ですね。子どもの貧困と非正規問題は密接に関連していると言っていいでしょう。(ちなみに、子どもの貧困率がこの20年で倍になったとのことですが、厚労省によると、1989年(平成元年)の非正規率が19.1%、1994年(平成6年)が20.3%、そして2012年(平成24年)が35.2%と、この20年で非正規率もほぼ倍化しているということにも符号しています)
直近の総務省「労働力調査」を見ると、2015年12月の全体の非正規率は38.1%と過去最悪となっています。年齢階層別のデータは、2013年1月からしかないので、そこで比較するしかないのですが、2013年1月のデータで、15~24歳の非正規率は49.1%、15~34歳の非正規率は25.7%。そして、直近の2015年12月には、15~24歳の非正規率は52.71%、15~34歳の非正規率は28.1%と、全体の非正規率と同様、アベノミクスによって若年層の非正規率も過去最悪レベルとなっています。
今回発表された戸室氏による「子どもの貧困率」は、2012年のものです。上のグラフで見たように、若年層の非正規率と子どもの貧困率が比例していることを考えると、この間のアベノミクスによる若年層の非正規率アップが、子どもの貧困率をさらに悪化させてしまっていることは容易に想像がつくのではないでしょうか。