戦争法可決で「平和主義捨てた日本」と海外メディアは報道、自衛隊「駆けつけ警護」は戦闘不可避、テロ標的ランク上がる日本、憲法9条を守るだけでなく「戦争とテロを止める国」へ|高遠菜穂子さん

高遠菜穂子さんにインタビューしました。いま編集中の『KOKKO』3月号にはインタビューの全文を掲載するのですが、ここでは「国公労新聞」(2016年1月10日号)に掲載したダイジェスト版を紹介します。

新春インタビュー
憲法9条を守るだけでなく
「戦争を止める国」へ
高遠菜穂子さん

2015年11月13日夜、パリ中心部のコンサートホールやカフェ、郊外の競技場などが襲撃され、130人が死亡、350人以上が負傷したパリ同時多発テロ。「対テロ戦争」の名の下、フランスなど有志連合によるシリアとイラクへの空爆が激化するなかでも、イラク市民への支援活動を懸命に続けている高遠菜穂子さんに2時間にわたってインタビューしました。インタビューの詳細については、『KOKKO』3月号に掲載しますので、ぜひご購読ください。(聞き手=国公労連調査政策部・井上伸、インタビュー収録日=2015年12月15日)

 ――パリの同時多発テロでフランスは非常事態を宣言し、シリアへの空爆を行っています。この問題をどう見ていますか?

知らされない空爆が奪う市民の命

有志連合などによる空爆は今に始まったことではありません。シリアとイラクでは2014年8月から5千回以上の空爆が行われ、すでに2万発以上のミサイルが投下されていたのです。

とりわけパリ事件の3日ほど前から空爆は激しさを増していて、民間人死傷者が多数出ていたのにほとんど報道されず知られていなかっただけです。中東などの市民の命と先進主要国の市民の命の重さに格差がある扱いが続いています。

一方、アメリカでもヨーロッパでもアジアでもテロ事件やテロ未遂事件が起きていましたから、パリの事件の前から私は明日どこで何が起きるか分からないと言ってきました。

また、国際テロ組織といわれるアルカイダやISのフランチャイズ化を含め、私は常々、国際情勢が猛スピードで悪化していると感じていましたから、パリの事件が起きたことには驚きませんでした。

残念なことに、イラク戦争から11年経って再び緊急支援の日々です。今もイラク市民に医薬品を届けたり、食料を届けたり、毛布を届けたりする支援活動を行っているのですが、2014年からは、病院も何十回と空爆されて医療支援が全くできなくなる事態も広がっていたので、パリの事件でさらに困難な状況となることに一番危機感を感じています。

 ――日本政府はイラク戦争を支持したことに対する反省も検証も一切なく、戦争法も強行し、フランス政府の対テロ戦争にも連帯を表明しています。

空爆を何万回やってもテロはなくならない

今の空爆というやり方は間違っています。空爆を何千回何万回やってもテロはなくなりません。

シリアとイラクは同じように扱われていますが、それぞれに事情があり、ISが台頭する背景がある。そして、パリにはパリの、若者がテロに走ってしまう背景があるわけです。

私はイラクのファルージャ、ラマディ、モスルという地域を12年間支援してきましたが、ここの人たちは今ISに完全にコントロールされています。外国人がいると言ってもイラクのISの戦闘員はイラク人が圧倒的に多い。ではなぜイラク人はISに加担していくのか。それはイラク国内に深刻な宗派対立などの原因があるのです。この原因をなんとかしないとIS問題は解決できない。もちろんフランスにはフランスの移民への排斥感情とかイスラムフォビア(イスラム嫌悪)をはらんだ差別や抑圧の問題があり、それらを解決していく必要があります。

空爆でISの幹部をいくら殺しても他からどんどん出てくるだけです。アジアの国も同じです。いまアルカイダ系やISが、リクルートで盛んに目をつけているのはアジアです。

たとえばミャンマーの少数民族でイスラム教徒のロヒンギャの人たちが近隣のシンガポールやマレーシアに拒絶され、海で彷徨っているという報道は全世界のイスラム教徒に衝撃を与え、アルカイダのトップであるザワヒリや、ナイジェリアのボコハラムが「アジアのムスリムよ、立ち上がれ! 聖戦だ!」「奴隷扱いされて一生終えるぐらいなら、家族全員連れてシリアに来い」などと勧誘している。アルカイダもすでに、アジアで軍事訓練をはじめているという報道があります。

これらの問題を一つひとつ、それぞれの国がどうしたらいいかを考え、国際協力もそれらの問題の原因をなくしていく方向で行っていく必要があるのです。

自衛隊の「駆けつけ警護」は戦争そのものに突入

先の国会で戦争法が強行採決され、自衛隊は、来年の参議院選挙後には「駆けつけ警護」を実施すると言われています。「駆けつけ警護」と聞くとヒロイックなかっこいい感じがしますが、戦場に駆けつけると警護も何もなく、重武装で駆けつければ、これはもう戦闘行為に入らざるをえません。とりわけ対テロ戦争においては、正規軍ではなく、国際法やジュネーブ条約が通用しない武装勢力であって、どこから出てくるか分からないという戦術をする。南スーダンも危ない情勢なので、住民を守ろうとして自衛隊員が発砲したとしても大変なことになるでしょう。

またISをはじめ、日本に対する標的のランクが急激に上がってきています。日本人をやったとなるとニュースになるし、目立つ。そうなると数千㎞離れたところで日本人を探せとなって、観光地でもどこでも、ということも考えられる。そのリスクは、私たちの時とは比べものにならないほど大きくなっています。

戦争法可決で「平和主義を捨てた日本」と海外メディアは報道

戦争法可決についてある海外大手メディアは、「平和主義から軍国主義へ」「平和主義を捨てた日本」と書きました。そしてISは日本を標的だと言っている。国内だけで安倍政権に文句を言っていても世界には届かない。世界に向け、私たちは態度で示すべきです。

私のイラク支援は、年々その意味合いが強くなっています。日本の市民がこれだけの支援物資をコンスタントに届けている。日本の人たちはイラクを忘れていませんよ、コンスタントに支援を続けていますよ、テレビで報道される安倍政権の姿勢だけが日本じゃないですよ、多くの日本の人たちは平和主義を貫きたいと思っているんですよ、と実際の支援の行動で示していくことをますます強める必要があると思っています。

「平和憲法を守る」「戦争しない国を守る」だけでなく、私は日本を「戦争を止める国」にしたいと考えています。

井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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