突出した世界一の長時間労働でうつ病休職者10年で3倍増の日本の教員、教員の「うつ傾向」は一般企業の2.5倍←5年連続で世界一低い日本の教育への公的支出に加え財務省が教職員3万7千人削減ねらう倒錯の日本

今朝の報道です。

財務省 教職員3万7000人削減要請の構え
NHKニュース 00010月23日 4時38分

公立の小中学校の教職員の定数について、財務省は、少子化が進んでいることから、今後9年間で3万7000人減らすよう文部科学省に求めていく構えで、これから本格化していく来年度・平成28年度の予算案の編成では、教職員の削減が焦点の1つになりそうです。

財務省は厳しい財政事情を踏まえ歳出の削減策を検討していて、このうち公立の小中学校の教員や職員の定数について、少子化が進むなか、中期的に大幅な削減は避けられないとしています。その前提となる児童や生徒の数について、財務省は、今年度の969万人が平成36年度には875万人と、今後9年間で94万人減少すると試算しています。

これを受けて、財務省は、いじめや不登校対策、少人数指導など現在の取り組みを維持できるよう教職員を配置しても、その定数は平成36年度には今年度より3万7000人少ない65万6000人まで減らせるとしています。財務省は、こうした方針を財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会に来週示したうえで、文部科学省に求めていく構えです。

これに対し、文部科学省は、教育レベルの向上や現場の繁忙を改善するには、平成36年度時点で68万8000人が必要だとしていて、これから本格化していく来年度・平成28年度の予算案の編成では教職員の削減が焦点の1つになりそうです。

財務省も安倍政権も「世界最低の教育への公的支出」がもたらしている「子どもの貧困」と「学校のブラック企業化」のことを知らないのでしょうか? 以下は昨年(2014年)6月に書いたYahoo!ニュースですが紹介しておきます。

OECDが、日本を含む34カ国・地域の中学校教員の勤務状況に関する調査結果を発表しました。その中で最も驚いたデータを私が分かりやすくグラフにしたものが以下です。

グラフにあるように、教員の1週間の労働時間が、日本は53.9時間と突出していて、各国平均の1.4倍で14.6時間も長く、一番短いチリのなんと1.84倍で24.7時間も長くなっています。

内訳を見ると、部活動など課外活動指導が7.7時間と各国平均の2.1時間の3.6倍。書類作成など事務作業の時間が5.5時間と各国平均の2.9時間の1.9倍で、なんと授業時間は17.7時間で、各国平均19.3時間より短くなっています。

そして、「生徒に勉強できる自信を持たせているか」という問いでは、各国平均で9割近くが「できている」と積極的に肯定しているのに、日本の教員は2割に満たなかったという結果が出ています。日本の教員は忙しすぎて、子ども一人ひとりと向き合う時間が足りないという状況になってしまっているのです。

この突出した日本の教員の長時間労働と相関関係にあるのが世界一低い日本の教育への公的支出です。下のグラフは、OECDデータから分かりやすくグラフにしたものです。5年連続で世界一低い日本の公的支出は、少ない教員数をはじめ、日本の教育体制の脆弱性となってあらわれています。

当たり前の話ですが、小さな公的支出の裏返しで教育への私的負担が大きくなって、子どもの貧困問題を悪化させる原因のひとつになっています。また、多忙な教員が子ども一人ひとりに向き合えないため、深刻化する子どもの貧困とも相まってさらなる学力低下なども問題になってきています。深刻な子どもの貧困が広がっているにもかかわらず、世界最悪の生活困窮状態にあるひとり親世帯の児童扶養手当の削減を、2013年度に続き、2014年4月から安倍政権は強行しています。安倍政権は、子どもの貧困促進政権でもあり、ここまでくると、教育を、子どもを、ネグレクトしている政権と言っても過言ではないと思います。(※参照→「自販機の裏で暖を取り眠る子ども、車上生活のすえ座席でミイラ化し消えた子どもの声が届かない日本社会」「駅前トイレで寝泊まりするトリプルワークの女子高生、100円ショップの薬用オブラートで空腹まぎらわす子ども、深刻な6人に1人の子どもの貧困を深刻化させ経済成長も損なう安倍政権」)

一方、教員の方は以下のような状況に追い込まれています。

上のグラフは、文部科学省の「教員のメンタルヘルスの現状」(2012年3月4日)からです。グラフを見てわかるように、教員の精神疾患による休職者は10年で約3倍も増えています。

上のグラフ(文部科学省「教員のメンタルヘルスの現状」)にあるように、教員の精神疾患による休職者の2.84倍という増え方は、日本全体の増加に対して1.8倍と倍近いものになっているのです。

上の2つのグラフ(文部科学省「教員のメンタルヘルスの現状」)にあるように、精神疾患以外の病休者はほぼ横ばいなのに、精神疾患が急増し、教員の病気休職者に占める精神疾患の割合は約6割にのぼっています。

それでは、なぜ教員はこんなに精神疾患による病休者が激増してしまったのでしょうか?

上のグラフは、文部科学省も客観データとして活用しているウェルリンクによる調査です。これによると、強い疲労を訴える教員は一般企業の3倍以上に及んでいるのです。

そして、上のグラフにあるように、「1週間の中で休める日がない」とする教員は半数に近い43.8%で一般企業の約3倍にもなっています。こうした状況で、「児童生徒の訴えを十分に聴く余裕がない」とする教員は61.5%にも及んでいます。そして、教員の「うつ傾向」は一般企業よりも2.5倍も多くなっているのです。すでに日本の教育現場はブラック企業のような状況になっていると言っても過言ではないでしょう。

以上、見てきたように、世界一低い教育への公的支出と、社会保障連続改悪や雇用破壊などが、子どもの貧困問題を深刻にし、ブラック企業のような教育現場を生み出しています。貧困連鎖ともなる子どもの貧困を悪化させ、さらに教育現場のブラック化を加速せざるをえない労働法制改悪などを進める安倍政権は、子どもの可能性をつみとり、日本社会の基盤をみずから壊していると思います。

井上 伸雑誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学教職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)中央執行委員(教宣部長)、労働運動総合研究所(労働総研)理事、福祉国家構想研究会事務局員、雑誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者、日本機関紙協会常任理事(SNS担当)、「わたしの仕事8時間プロジェクト」(雇用共同アクションのSNSプロジェクト)メンバー。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)があります。

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